受益者に対する詐害行為取消権の要件【民法改正】

受益者に対する詐害行為取消権の要件
- 債権者は、債務者が債権者を害することを知ってした行為の取消しを裁判所に請求することができる。ただし、その行為によって利益を受けた者(以下この第16において「受益者」という。)がその行為の時において債権者を害することを知らなかったときは、この限りでない。
- 1の規定は、財産権を目的としない行為については、適用しない。
- 債権者は、その債権が1に規定する行為の前の原因に基づいて生じたものである場合に限り、1の規定による請求(以下「詐害行為取消請求」という。)をすることができる。
- 債権者は、その債権が強制執行により実現することのできないものであるときは、詐害行為取消請求をすることができない。
第1項・2項は改正前の民法とほぼ同じで、詐害行為取消権はどんな場合にできるのか?また、できないのかを記述しています。
詐害行為取消権はどのような場合にできるのか?
AはBに100万円を貸していました。その後、返済期限がきたにも関わらず、BはAに100万円を弁済しません。さらに唯一の資産である2000万円の価値のある土地をCに贈与してしまった。
理由は、100万円の借金を返さなければ、自分Bの土地をAに取られてしまうから、とりあえず、名義だけでも変えるためにCにプレゼントして、とりあえず、自分のものではないから差押えもできないよ!という風にしたかったからです。
この場合、Aは債権者、Bは債務者、Cは受益者となります。
Aからすると2000万円の土地はもともとBのものであったのだから、それをあてにして100万円を貸したはずです。
こんな場合に、Aは土地から回収しようしていた権利を害されたということで、BC間の贈与契約を取り消すことができます。
詐害行為=BがCに贈与した行為
ただし、例外として、Cが、この贈与がAの権利を害することを知らなかった(善意)場合は、Aは取消しを主張できません。
詐害行為はどのような場合にできないか?(第2項)
離婚による財産分与や相続放棄などの身分上の行為は、原則として詐害行為にならないのですが、宅建試験ではここまでは出題されないので気にしなくても良いでしょう。
詐害行為取消権の要件(第3項・4項)
債権者が詐害行為取消を請求できるのは、債権者の債権が、詐害行為の前の原因で生じていなければなりません。
また、詐害行為取消権は、債務者の責任財産を保全して強制執行の準備をするものであることから、強制執行によって実現できない債権については詐害行為取消権を講師できません。
詐害行為取消権の要件 |
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受益者に詐害意思があること(詐害行為であることを知っていること) |
被保全債権が、詐害行為がなされる前に成立していること |
債務者が無資力であること |
債務者の行為が財産権を目的とする行為であること |