弁済

弁済とは?
弁済とは、債務を履行する行為を言います。
例えば、
- 借りたお金を返す行為
- 買った物の代金を支払う行為
- 売った物を引き渡す行為
- 出演の契約した芸能人が出演する行為
弁済の提供
債務者が自分の債務を履行するために必要な準備をして 債務者に対してその協力を求めることをいいます。
例えば、
不動産の売買では、 売主は土地を「引き渡す義務」と「所有権移転手続きを行う義務」を負い
一方、買主は「代金を支払う義務」を負います。
ここで、買主が売主に対して、「お金を用意したから受け取ってくれっ」とお金を持参して 売主の家まで行って言った場合、売主がお金を受け取らなくても 買主は弁済を提供したことになるということです。
そして、弁済の提供の方法には2種類あります。
弁済の提供の方法
1.現実の提供:債務に従って、現実に提供すること
持参債務の場合は、債務者は、目的物を準備し、 それを持参して債権者の所に赴く必要があります。 金銭債務は持参債務(持参しなければならない)です。 また弁済は債務の本旨に従ったものでなければなりませんから 一部の提供では弁済の提供にはなりません。
2.口頭の提供:弁済の準備をして受領を催告すること
この口頭の提供ができるのは、下記2つの場合です。
- 債権者があらかじめ受領を拒んでいる場合
- 債務の履行について債権者の行為を要する場合
弁済の費用
弁済の費用については、特約がなければ原則、債務者の負担です。ただし、例外として、債権者が住所の移転などによって弁済の費用を増加させたときは、その増加額は、債権者の負担とする。
弁済の効果
弁済を行うことによってどうなるのか?大きく分けると2つの効果が生じます!
- たとえ、債権者が受領しなくても、債務者は弁済の提供の時から、債務の不履行によって生ずべき一切の責任を免れる。
- 相手方の同時履行の抗弁権を奪う。
1の具体例
10月10日を返済期日として20万円を借りたとします。そして、10月10日に借主(債務者)が現金を持参し、貸主(債権者)の自宅に赴き、返済しようとしたが受領しなかったとしても、借主は「弁済の提供」をしているので、10月11日なっても債務不履行(履行遅滞)にはなりません(=債務不履行による責任を免れる)。
2の具体例
売主Aと買主Bが建物の売買契約を締結したとします。
売主Aは建物の引き渡し債務を負い
買主Bは代金の支払い債務を負います。
そして、売主Aは期日に建物の引き渡しをしようとしたが、買主Bは代金を支払えなかった。この場合、買主Bは「建物を引き渡さないなら代金を支払いません!」という同時履行の抗弁権が使えなくなります。その結果、買主Bを債務不履行(履行遅滞)にすることができます。
弁済の受領権限のない者に対する弁済
原則として、弁済を受領する権限を有しない者に対して行った弁済は、無効です。ただし、例外として、債権者としての外観を信頼して弁済した場合(下記2パターン)は、有効となり、債権・債務は消滅します。
- 債権の準占有者に対する弁済
債権者ではないが、印鑑や通帳を持参したもの(債権者の外見をしたもの)が銀行(債務者)に預金を引き出すよう要求し、銀行が預金を弁済した場合、たとえ、預金を引き出した者が債権者なでくても有効となる。 - 受取証書の持参人に対する弁済
第三者弁済
第三者弁済とは、債務者以外の者が弁済することを言います。
例えばBがAからお金を借りたとします。
通常、お金を借りたB(債務者)がAにお金を返すのが筋ですが、当該貸金契約に関係ない第三者も弁済することができます。
第三者弁済・代位弁済できるもの
原則として、第三者は、債務者に代わって弁済することができます。(第三者弁済はできる)
ただし、例外として下記の場合は第三者弁済ができません。
1.当事者が反対の意思表示をしたとき。
2.法律上の利害関係のない第三者の弁済が債務者の意思に反するとき
法律上利害関係のある第三者とは
物上保証人、担保不動産の第三取得者、後順位担保権者、借地上建物の賃借人 です。
また、保証人や連帯保証人も債務者の意思に反して第三者弁済ができます。
弁済による代位
弁済した第三者が債権者に代位することを弁済による代位といい、任意代位と法定代位がある。第三者が取得する債務者に対する求償権を保全するための制度です。簡単に言えば、債権者が、元の債権者から弁済した第三者に移るわけです。
法定代位 | 弁済をするについて正当な利益を有する者は、弁済によって当然に債権者に代位する。 上記の例で、第三者Cが債権者Aに弁済をすると、債権者Aが有していた「Bに対する貸金債権」が第三者Cに移転して、弁済した第三者CはBに対して、弁済した額を請求(求償)することができるようになります。 |
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任意代位 | 正当な利益を有さない者が第三者弁済をした場合、その弁済と同時に債権者の承諾を得て、債権者に代位することができる。 |
代物弁済
代物弁済とは、
本来はお金を借りたから、お金で返さなければいけないものを 債権者の承諾を得て、土地などの異なるもので弁済することを言います。
覚えるべき点は以下にまとめてありますのでご確認ください。
代物弁済のポイント
- 不動産で代物弁済する場合、所有権移転登記手続が完了して初めて、弁済完了となる
- 代物弁済の目的物は当事者が合意していれば、同価値のものでなくてもよい。そして、代物弁済すれば、清算完了となる
- 代物弁済として金銭債権を譲渡する場合は、対抗要件が具備されているならば、その金銭債権の弁済期が到来していなくても、弁済としての効力が生じる
- 不動産で代物弁済して、その不動産に隠れた瑕疵があった場合は賠償責任が生じる
弁済の場所
弁済する場所は、契約(特約)で定めれば、その場所が弁済場所になります。
弁済場所を定めない場合
特定物の引き渡しである場合
弁済の場所の定めがない場合で、「特定物の引渡し」の場合は、債権が発生した場所が弁済場所となります。
特定物とは何か?
例えば、「特定の絵」などが特定物に当たります。
この場合、契約場所まで取りに行くことになります。
特定物の引き渡し以外の場合
「特定物の引渡し以外」の場合は、当事者に別段の意思表示がないときは、債権者の現在の住所においてしなければいけません。
つまり、借りたお金を返す場合、債権者の現住所まで届けるのが原則です!
供託
弁済の提供の部分で解説しましたが、債権者が弁済を受領しない場合、債務者は債務不履行は免れますが、債務自体は消滅しません。
例えば、お金を借りて、返済しにいって、債権者が受領しなければ、貸金債務は残ったままということです。
しかし、債務者としては債務を消滅させたいですよね?
そんな時に使えるのが「供託」です。
供託とは、金銭などを国家機関である供託所に預けることで、弁済を完了させる制度です。
つまり、債権者に弁済する代わりに、供託所に弁済することで債務を消滅させる制度です。
供託した場合、債権者は供託所にお金を受け取りに行く流れになります。
供託ができる場合とは?
- 債権者が弁済の受領を拒んだとき
- 過失なくして債権者を確知できないとき(債権者の居場所が分からないとき)