意思表示のポイント

【民法改正に対応済です。】
出題ポイント
意思表示 | 当事者間 | 第三者との関係 |
---|---|---|
心裡留保 | 原則:有効 例外:相手方が悪意または有過失の場合は無効 |
善意の第三者には無効を主張できない |
虚偽表示 | 無効 | 善意の第三者には無効を主張できない |
錯誤 | 錯誤が成立する場合、あとで取消すことができる(改正民法) | 善意無過失の第三者にも無効を主張できる(改正民法) |
詐欺 | 相手から詐欺を受けた場合、あとで取消すことができる 第三者から詐欺を受けた場合、相手方が悪意or有過失の場合、取消しができる(改正民法) |
取消し前に第三者が現れた場合、善意無過失の第三者には取消しを主張できない(改正民法) 取消し後に第三者が現れた場合、登記を備えた方が優先する |
強迫 | 相手から強迫を受けた場合、あとで取消すことができる 第三者から強迫を受けた場合も取消すことができる |
取消し前に第三者が現れた場合、善意の第三者にも取消しを主張できる 取消し後に第三者が現れた場合、登記を備えた方が優先する |
心裡留保
心裡留保とは、契約する気持ちもないのに契約をすること。
つまり、冗談で契約をすること。
冗談で契約するとどうなるか?
冗談で契約した場合、原則、有効ですが、
例外として、相手方が悪意または有過失の場合は無効になります。
第三者が現れたらどうなるか?
A―→B―→C(第三者)
Aが冗談で土地をBにあげて、その土地をBがCに売った場合、Cはこの土地を有効に引渡してもらるか?
Cが善意(Aが冗談でBにあげたことを知らない)の場合は、CはAに勝って、有効に土地を引渡しもらえます。一方、Cが悪意(Aが冗談でBにあげたことを知っている)であったり、有過失(落ち度がある)の場合は、AがCに勝ち、AはBとの契約の無効を主張してCに土地を引渡さなくてよい。
虚偽表示
虚偽表示とは相手とグルになって(悪いことを考えて)、ウソの契約をすること。
契約したように見せかけて契約するとどうなるか?
例えば、Aが税金を滞納していたとします。
東京都はA所有の土地を差し押さえようとしています。
それは困るから、Aは友人Bとグルになって、その土地をBに売ったことにする。
この場合、AがBに土地を売った行為は「虚偽表示」に該当し、無効になります。
その結果、その土地はAに戻され、東京都は、土地を差し押さえるわけです。
第三者が現れたらどうなるか?
虚偽表示
A――――→B―→C
上記の例の後に、友人BがAを裏切ってCにその土地を売ったとします。
この場合どうなるのか?
Cが善意(Aが冗談でBにあげたことを知らない)の場合は、CはAに勝って、有効に土地を引渡しもらえます。
一方、Cが悪意(Aが冗談でBにあげたことを知っている)であったり、有過失(落ち度がある)の場合は、AがCに勝ち、AはBとの契約の無効を主張してCに土地を引渡さなくてよい。
錯誤
錯誤とは、勘違いをして契約をすること。
錯誤が成立すると、その契約は有効だが、後で取り消しができます。
錯誤が成立する場合とは?
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1については、「意思表示の錯誤(勘違い)」と「動機の錯誤(勘違い)」があり、「動機の錯誤」については、①動機を明示するか、②黙示的に明示していることが、追加の要件となっている。
錯誤が表意者の重大な過失によるものであった場合でも、錯誤取消しできる場合がある
錯誤が表意者の重大な過失によるものであった場合でも、①相手方が表意者に錯誤があることを知り、又は重大な過失によって知らなかったとき。もしくは、②相手方が表意者と同一の錯誤に陥っていたときは、表意者は、錯誤による取消しを主張することができます。(改正民法)
錯誤と第三者の関係
錯誤は、表意者は善意無過失の第三者に対して、錯誤取消しを主張できない。(改正民法)
詐欺
詐欺とは騙すこと。
契約相手に騙されて契約をした場合、取消すことができる。
第三者から詐欺を受けた場合
第三者に騙されて契約をした場合、
相手方が騙されていることを知っていたり(悪意)、もしくは過失があれば(有過失)、詐欺を理由に契約を取消すことができる。
相手方が過失なく知らない(善意無過失)場合は、契約を取消すことはできない。(改正民法)
相手方が第三者に売ってしまったらどうなる?
「取消し前に相手方が第三者に売った場合」と「取消し後に相手方が第三者に売った場合」とで異なります。
取消し前の第三者
①売却
A――→B――→C(第三者)
②取消し
Aが詐欺を受けてBに土地を売却 → Bが第三者Cに売却 → Aが詐欺を理由に取消し
この場合、第三者Cが善意無過失であれば、Cが保護され、Aは土地を取り戻ない(Cの勝ち)
一方、Cが悪意もしくは有過失であれば、Aは取消しを主張して、土地を取り戻せる(Aの勝ち)(改正民法)
取消し後の第三者
①取消し
A――→B――→C(第三者)
②売却
Aが詐欺を受けてBに土地を売却 → Aが詐欺を理由に取消し → Bが第三者Cに売却
この場合、先に登記を備えた方が勝ちます。
もし、Aが先に登記をすれば、Aは土地を取り戻せる。
もし、Cが先に登記をすれば、Cは土地の引渡しを受けられる。
強迫
強迫とは相手を脅して契約すること。
契約相手に脅されて契約をした場合、取消すことができる。
第三者に脅されて契約をした場合も契約を取消すことができる。
相手方が第三者に売ってしまったらどうなる?
「取消し前に相手方が第三者に売った場合」と「取消し後に相手方が第三者に売った場合」とで異なります。
取消し前の第三者
①売却
A――→B――→C(第三者)
②取消し
Aが強迫を受けてBに土地を売却 → Bが第三者Cに売却 → Aが強迫を理由に取消し
この場合、第三者Cが善意であっても悪意であってもでAは取消しを主張して、Aは土地を取り戻せる(Aの勝ち)
取消し後の第三者
①取消し
A――→B――→C(第三者)
②売却
Aが強迫を受けてBに土地を売却 → Aが強迫を理由に取消し → Bが第三者Cに売却
この場合、先に登記を備えた方が勝ちます。
もし、Aが先に登記をすれば、Aは土地を取り戻せる。
もし、Cが先に登記をすれば、Cは土地の引渡しを受けられる。