契約不適合責任

【民法改正に対応済です。】
目次
契約不適合責任とは、引渡された売物の種類・品質・数量について、契約内容に適合しない場合の引渡した者(売主・贈与者・請負人)の責任のことを言います。
言い方を変えれば、欠陥のある物を引渡された者(以下、買主とする)は、引渡した者(以下、売主とする)に対して文句が言えるということです。
では、「どのような文句」を言えるのか?
追完請求
目的物について「種類・品質・数量」に不適合があった場合、買主は、売主に対して、目的物の修補、代替物の引渡し、不足分の引渡しのいずれかを請求することができます。
ただし、契約不適合が買主の責任で生じた場合は、買主は、売主に対して追完請求をすることができません。
代金減額請求
目的物について「種類・品質・数量」に不適合があった場合、原則、買主は、売主に対して、相当期間を定めて、履行の追完請求をし、売主が履行の追完を行わなかった場合に、不適合の程度に応じて代金減額請求ができます。
⇒分かりやすい解説は「レトスの個別指導」で行っています。
ただし、契約不適合が買主の責任で生じた場合は、買主は、売主に対して代金減額請求をすることができません。
損害賠償請求
目的物について「種類・品質・数量」に不適合があった場合、上記「追完請求」や「代金減額請求」だけでなく、債務不履行の一般原則に従い、買主は、売主に対して、損害賠償請求を行使することができます。
契約解除
目的物について「種類・品質・数量」に不適合があった場合、上記「追完請求」や「代金減額請求」だけでなく、契約解除も可能です。
契約不適合責任が生じる具体例
ここからは、どのような場合に契約不適合責任が発生するかを見ていきます。
全部他人物売買
売主の売った物が「全部他人の物」であった場合が全部他人物売買です。
こんなことありえるの?と思うかも知れませんが、事実、A所有の土地を、売主BがCに売却することができます。
この場合、BがAから土地を購入して、Cに引き渡すことができない場合、担保責任(契約不適合責任)が生じるということです。
一部他人物売買
売主の売った物が一部が他人の物であった場合が一部他人物売買です。
例えば、売主BがCに売却した土地の一部にA所有の土地が含まれた場合が一部他人物売買です。もし、この「A所有の土地」について、売主Bが現所有者Aから譲り受けることができず、買主Cに引き渡しができない場合、売主Aは担保責任(契約不適合責任)を負います。
数量指示売買
売主の売った物について、数量を決めていたにも関わらず、決めた数量より少なかったり、一部が滅失していた場合、この場合も売主に対して契約不適合責任が発生します。
例えば、土地を100㎡、1000万円で購入する契約をして、実際に測量してみたら90㎡しかなかった場合、10㎡分足らないので、その分について、減額請求をしたり、また隣地に10㎡あるのであれば、その部分の引渡しを請求(追完請求)したりできます。
用益権等付着売買(地上権、質権等の制限が付いている)
売主の売った物に、「他人の地上権、永小作権、留置権、不動産質権または登記した賃借権」が存在する場合、用益権付着売買となります。
これらの権利は抹消して引渡す契約をしていたにも関わらず、そのまま権利が残っていた場合、売主は契約不適合責任を負います。
存在するとされた地役権が存在しない場合
また、売買の目的である不動産のために「存在するとされた地役権が存しなかった場合」も契約不適合責任が生じます。
例えば、公道に通じていない袋地の土地について、地役権がついていないとなると、囲繞地通行権はあるものの、出入りに不便が生じます。そのため、担保責任(契約不適合責任)の対象になるわけです。
抵当権付着売買(抵当権が実行された場合)
売主の売った物に抵当権など権利実行により所有権を失う場合、抵当権付着売買となります。
この場合、売主は契約不適合責任を負います。
瑕疵担保責任
売った物に契約内容に適合しない瑕疵(欠陥)がある場合、契約不適合責任の対象となります。
契約不適合責任の期間制限
引渡された物の「種類・品質」に不適合が存在する場合、買主が不適合の事実を知ったときから1年以内に当該不適合の事実を売主に通知しないときは、買主は、「追完請求・代金減額請求・損害賠償請求・契約解除」の行使をすることができなくなる。
ただし、引渡された物の「種類・品質」に不適合が存在について、売主が悪意又は重過失の場合、売主を保護する必要性は低いので、上記期間制限は適用されません。